金箔と金糸

世界に誇る日本の伝統工芸、西陣織。
多彩な色糸が織りなす精緻(せいち)な美しさはもちろんですが、西陣織をさらに「絢爛豪華(けんらんごうか)」に引き立てている名脇役がいるのをご存知でしょうか?

それが「金銀糸(きんぎんし)」です。

織物に金銀の輝きを宿す技法には、大きく分けて「金箔(きんぱく)」と「金糸(きんし)」の2つがあります。今回は、西陣織の美しさを支えるこの2つの違いと、職人たちの精緻な技術についてご紹介します。

職人の手技が光る「金箔(きんぱく)」の引き込み技

まずご紹介するのは「金箔」です。
ここでいう金箔は、そのまま織り込むわけではありません。和紙に金箔を貼り付けたもの(または蒸着させたもの)を、極めて細く糸状に裁断して使用します。

驚くべきはその織り方です。
細く切った金箔は平らな状態であるため、織物を織る際に「緯糸(よこいと)」として使われます。職人は竹のヘラを使い、この細い金箔を1本1本丁寧に引き込みながら織り進めていくのです。一瞬の妥協も許されない、まさに熟練の職人技が息づく技法です。

表現の幅を広げる、芯のある「金糸(きんし)」

一方で「金糸」は、その名の通り「糸」の形をしています。
これは、芯になる糸のまわりに金箔をくるくると 巻き付けて糸状にしたものです。

金糸は最初から丸い糸の形をしているため、普通の先染めの色糸と同じように扱うことができます。そのため、緯糸(よこいと)としてだけでなく、織物のベースや縦のラインを形作る「経糸(たていと)」としても自由に使うことができるのが大きな特徴です。

  • 金箔:和紙に貼った金箔を細く切り、緯糸として竹ヘラで丁寧に引き込んでいく技法
  • 金糸:芯糸に金箔を巻き付けて糸状にし、経糸にも緯糸にも自由に使える技法

平らな金箔を職人技で織り込むのか、糸として縦横無尽に張り巡らせるのか。
この2つの金銀糸が巧みに使い分けられているからこそ、西陣織は立体感のある圧倒的な美しさと輝きを放ち続けているのです。

次回は、その輝きの元となる『金銀箔』がどうやって作られているのか、職人の驚くべき世界に迫ります。

参考文献

  • 西陣織技術読本2023 金銀糸~箔と糸
  • 「京都金銀糸平箔史」