西陣織を支える金銀箔

輝きと表現を広げる、箔の種類

西陣織の帯地に織り込まれる箔は、金箔や銀箔などを薄く延ばし、和紙に貼り付けて細く裁断したものです。こうして作られる箔は、西陣織ならではの華やかな輝きや繊細な表現を生み出す、大切な素材のひとつです。

かつては、無地の金箔や銀箔が主に用いられていました。しかし、戦後になると染料や加工技術の発達、時代ごとの流行の変化に伴い、筆や刷毛などで図案や模様を施した「模様箔」も多く使われるようになりました。

また、金銀箔以外にも、銅合金を原料とする真鍮箔(しんちゅうはく)やアルミ箔、ポリエステルフィルムに金属を真空蒸着させたポリエステル箔など、さまざまな種類の箔が用いられています。

金銀箔から金銀糸へ ― 伝統の製造工程

金銀箔は、そのまま織物に用いられるだけでなく、加工方法によって「平箔(ひらはく)」や「撚糸(よりいと)」へと姿を変えます。

① 和紙に金銀箔を貼り付ける
まず、きわめて薄く延ばした金箔や銀箔を和紙に貼り付けます。接着には漆などが用いられ、箔を和紙に定着させることで、その後の裁断や加工が可能になります。

② 細く裁断して「平箔」にする
金銀箔を貼り付けた和紙を、縦方向に細く裁断します。このようにして作られたものが「平箔(ひらはく)」、または「平金糸(ひらきんし)」と呼ばれます。
平箔は、西陣織の帯地などに織り込まれ、金属特有の輝きと豊かな表情を織物に与えます。

③ 芯糸に巻き付けて「撚糸」にする
細く裁断した箔を別の芯糸に巻き付け、撚りをかけて仕上げたものが「撚糸(よりいと)」です。
金箔を用いたものは「本金撚糸(ほんきんよりいと)」、銀箔を用いたものは「本銀撚糸(ほんぎんよりいと)」と呼ばれます。芯糸の種類や加工方法によっても仕上がりが変わり、用途に応じたさまざまな金銀糸が生み出されます。

④ 用途に合わせて和紙の厚みを変える
箔づくりでは、平箔として用いる場合と、芯糸に巻き付けて撚糸にする場合とで、使用する和紙の厚みが異なります。
一例として、原紙の重量は500m当たり、平箔用で約13kg、撚糸用で約5.5kgとされています。
このように、用途に応じて原紙を使い分けることも、求められる品質に仕上げるための大切な工夫のひとつです。

金銀箔を支える日本の手漉き和紙

金銀箔の製造には、雁皮(がんぴ)、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)などを原料とする手漉き和紙が用いられます。

こうした和紙は、箔を支える重要な素材であり、その品質は箔の加工や仕上がりにも関わります。

主な産地として、高知県いの町をはじめ、岐阜県美濃市、愛媛県四国中央市などが挙げられます。これらの地域で作られた和紙は、京都市内の紙問屋などを通じて調達され、西陣のものづくりを支えています。

参考文献

  • 西陣織技術読本2023 金銀糸~箔と糸
  • 「京都金銀糸平箔史」